ブログ No.4 2026年7月30日
なぜ日本式営業はアメリカで通用しないのか
「日本では営業成績トップだった人材を送り込んだのに、アメリカでは全く結果が出ない。」
30年間、日系企業の米国営業を支援するなかで、この相談を何度受けたかわかりません。本人の能力の問題ではありません。日本で磨き上げた「営業の型」そのものが、アメリカという市場では機能しないのです。
日本式営業は、日本市場に最適化された完成度の高いシステムです。しかしその強みこそが、米国では裏目に出ます。今回は、その代表的な5つの「型」を取り上げます。
型① 「足で稼ぐ」——訪問回数で信頼を築く営業
日本では、何度も顔を出すこと自体が誠意の証明です。用件がなくても立ち寄る。その積み重ねが「あの人は熱心だ」という評価につながります。
アメリカでは逆です。目的のない訪問は、相手の時間を奪う行為とみなされます。「近くまで来たのでご挨拶に」は、誠意ではなく準備不足のサインと受け取られかねません。
✅ 対処法:接触の「回数」ではなく「一回ごとの前進」で設計してください。すべてのミーティングに目的と、終了時に合意すべき「次のステップ」を用意する。会う価値を毎回証明することが、米国流の誠意です。
型② 「察してもらう」——控えめさを美徳とする提案
日本では、自社製品を声高に誇ることは品がないとされます。「弊社なりに工夫しております」と控えめに語り、良さは相手に察してもらう。それが大人の営業です。
しかし米国のバイヤーは、あなたの言葉をそのまま受け取ります。控えめに語れば、控えめな製品だと理解されます。謙遜は美徳ではなく、「自信のなさ」として記録されるのです。
✅ 対処法:自社の価値は、具体的な数字で言い切ってください。「導入企業の平均で○%のコスト削減」「業界シェア○位」。事実を明確に語ることは、米国では誇張ではなく誠実さです。
型③ 「まず関係、その後に商談」——順序の思い込み
日本の営業は、会食や雑談を重ねて人間関係を築き、その土台の上に商談を載せます。関係なくして取引なし、が原則です。
米国は順序が逆です。まず小さな取引で実力を示し、その実績が関係を築きます。「仕事の前にまず親睦を」と時間をかけている間に、競合はもう最初の納品を終えています。
✅ 対処法:大型契約を狙う前に、小さく速い「最初の成功」を提案してください。パイロット導入、限定的なプロジェクト——実績こそが、米国で最も強い関係構築ツールです。
型④ 「持ち帰って検討します」——稟議のスピードが機会を殺す
日本では、その場で即答しないことが慎重さの証です。持ち帰り、稟議を回し、全員の合意を得てから返答する。
しかし米国の商談には「鮮度」があります。バイヤーが動いている瞬間に応えられなければ、案件は静かに競合へ流れます。「東京に確認します。2週間ください」は、米国では「この会社とは仕事のスピードが合わない」という判断材料になります。
✅ 対処法:現地チームに、価格・納期・契約条件の「即答できる範囲」を事前に委譲してください。すべてを委ねる必要はありません。ただし「何も決められない営業」は、米国では商談相手として扱われなくなります。
型⑤ 「良いものは売れる」——製品力への過信
日本の製造業には「品質で語る」文化があります。仕様、精度、耐久性。製品が優れていれば、いずれ市場は認めてくれる、と。
米国のバイヤーが買うのは、製品ではなく「自分の問題の解決」です。どれほど高品質でも、「それが自分のどの課題を、いくらで、いつまでに解決するのか」が語られなければ、比較検討の土俵にすら上がれません。
✅ 対処法:提案の主語を「製品」から「顧客の課題」に変えてください。スペックの説明は最後で構いません。まず「御社のこの課題を、こう解決します」から始める。これが米国式のソリューション営業です。
日本式営業は「劣っている」のではない
誤解しないでいただきたいのは、日本式営業が劣っているわけではない、ということです。日本市場では、あの型こそが最強です。問題は、最適化された市場が違うこと。ゴルフのスイングで野球のボールは打てません。
型の違いを認識し、米国用の型を身につける。それだけで、御社の営業力は米国でも十分に通用します。
サガモアーグローバルコンサルティングは、30年の米国営業の現場経験をもとに、日系企業の「米国式営業への転換」を支援しています。営業トレーニングやプロセス設計について、まずはお気軽にご相談ください。