ブログ No.5 2026年8月17日
御社の米国営業チームは健全ですか
「米国の営業チームが、なかなか結果を出せない。」
こう悩む日系企業の経営者・責任者と話すとき、私たちがまず確認するのは商品でも市場でもありません。チームの構成と、その運営モデルです。
米国営業チームの不振には、多くの場合、パターンがあります。そしてそのパターンは、「誰を採用したか」よりも「どういう構造でチームを動かしているか」に起因していることがほとんどです。
よく見られる3つのパターンと、それぞれの処方箋をご紹介します。御社のチームはどれに当てはまりますか。
パターン① 日本人営業のみのチーム
日本本社から派遣されたスタッフ、または現地採用の日本人で構成されるチームです。商品知識は深く、本社との連携もスムーズです。しかし米国市場では、深刻な壁にぶつかることが多い。
問題の核心は、米国式の営業スタイルへの適応です。沈黙を恐れる、クロージングを躊躇する、バイヤーへの直接的な推薦を避ける——これらはすべて、日本の商習慣では「正解」ですが、米国では機会損失に直結します。
また、現地のネットワークや文化的文脈が薄いため、見込み客へのアクセスや信頼構築に時間がかかりすぎるケースも多く見られます。
✅ 対処法:日本人チームの強み(誠実さ、緻密さ、製品知識)は活かしつつ、米国式の営業行動を明示的にトレーニングすることが不可欠です。「察してもらう」営業から「明確に伝える」営業へのシフトを、仕組みとして組み込んでください。KPIも、訪問件数や提案書の丁寧さではなく、コンバージョン率・クロージング率・パイプライン速度で設計しましょう。
パターン② 米国人営業チーム + 米国人営業VP + 出向日本人CEO
ここでいうCEOとは、日本本社から米州法人へ出向して赴任した日本人社長(以下、出向社長)を指します。表向きは「完全にローカライズされた営業組織」に見えます。米国人の営業担当者がいて、米国人の営業VPがいる。構造だけ見れば理想的です。しかし出向社長との間に深い断絶がある場合、このモデルは静かに、しかし確実に機能不全に陥ります。
問題は指揮系統ではなく、意思決定のスピードと現場への介入にあります。米国人営業VPは現場の判断で動こうとします。価格の柔軟性、契約条件の調整、提案のカスタマイズ——これらを迅速に決めることが米国の商談では不可欠です。しかし出向社長が東京本社のスタイルをそのまま持ち込んで承認ループを求めると、VPは動けなくなります。商談のスピードが落ち、バイヤーは熱量を失います。
もう一つの断絶は評価基準です。出向社長が「丁寧なプロセス」「関係構築の深さ」「長期的な信頼」を重視する一方、米国人VPとチームは「今期のクローズ数」「パイプラインの回転速度」で自分たちを評価します。この基準のズレが続くと、VPは「社長は現場を理解していない」と感じ、出向社長は「VPは短期志向すぎる」と感じます。信頼が失われ、組織が空洞化します。
✅ 対処法:出向社長と米国人VPの間に、明文化された権限委譲の範囲を設けることが最優先です。「VPが単独で判断できること」と「社長の承認が必要なこと」を明確に線引きし、日常の商談判断はVPに任せる仕組みを作ってください。
そのうえで、評価指標を事前に合意し、双方が同じ数字を見て議論する定例会を設けます。ここで重要なのは頻度です。信頼関係を深める初期段階では、四半期に一度では到底足りません。最低でも隔週、可能であれば週一回の定例会を実施してください。間隔が空くほど、出向社長の認識と現場の実態はずれていきます。出向社長の役割は「監督」ではなく「戦略的支援」です。
パターン③ 日本人クローザー + 米国人インサイドセールス
比較的新しい分業モデルです。米国人スタッフがプロスペクティング(見込み客の発掘・初回接触)を担当し、日本人がその後の関係構築とクロージングを担うパターンです。
理論上は合理的に見えます。しかし実際には、引き継ぎのタイミングと質に深刻な問題が生じやすい。
米国人インサイドセールスが「興味あり」と判断してパスしてきた案件を、日本人クローザーが「まだ関係が浅い」と感じてゆっくりアプローチすると、バイヤーの熱量が冷めてしまいます。逆に、日本人クローザーが「この案件はもう少し温めたい」と感じているうちに、米国人側は「なぜ動かないのか」と苛立ちます。
また、このモデルは顧客にとっての担当者が途中で変わるという構造的な問題も抱えています。米国のバイヤーは「誰と話しているか」を重視するため、担当者交代がマイナスに働くことがあります。
✅ 対処法:このモデルを機能させるには、引き継ぎの基準を明文化することが最優先です。「何が揃ったら日本人クローザーにパスするか」を数値と行動基準で定義し、双方が共有してください。また、顧客に対しては引き継ぎを「チームでのサポート強化」として自然に説明できるスクリプトを用意しましょう。担当者交代ではなく、チームアプローチとして見せることが鍵です。
チームの構成より、運営モデルが結果を決める
どのパターンが「正解」かは、御社の商品・市場・フェーズによって異なります。大切なのは、自社がどのパターンにあるかを正確に把握し、そのパターンに適した運営モデルを意図的に設計することです。
チームが結果を出せていないとき、採用の問題と決めつける前に、一度立ち止まって問い直してみてください。「このチームは、正しい動き方ができる環境に置かれているか」と。
サガモアーグローバルコンサルティングは、30年の米国営業経験をもとに、日系企業の米国営業チームの診断と改善をご支援しています。まずはお気軽にご相談ください。